漫画のような吹き出しとデフォルメされ描かれた女性。
ロイ・リキテンシュタインは漫画の一コマをモチーフにした作品が有名なポップアートの代表的な画家です。
彼の絵を見るとそもそも漫画の一コマがアートになるのかっていう素朴な疑問が湧いてきますね。たとえばワンピースの一コマがアートになるのかっていう話です。
ポップアートの視点から
この作品をアートたらしめているのがポップアートの考え方です。ポップアートは1960年代のアメリカで盛んとなった大量生産・大量消費社会をテーマにした現代美術の芸術運動です。
現代人である我々は日常的に大量の広告や製品に囲まれて生きています。そのようなマスメディアから送り出される情報記号こそが、山や海などに代わる現代のランドスケープであるという視点がポップアートにはあります。
この視点から、リキテンシュタインは漫画の一コマを作品のモチーフに採用しました。彼は漫画の平面的な表現法が絵画よりも強いインパクトや表現力を持っていると感じたそうです。
漫画の一コマには悲しみや戸惑いなど現代のリアリティが記号化されて詰め込まれています。
リアリティの記号化というこというのがわかりにくいかもしれません。たとえば漫画の吹き出しは人物が発している言葉と結び付けられます。現実には話していて吹き出しなんて出てこないですよね。そもそも漫画で描かれている絵も線の集まり、つまり記号です。ぼくたちの身体に黒い縁はありません。
彼はこのような平面的な表現を極端に強調することで、漫画で描かれる感情をさらに増幅しようとしました。
リキテンシュタインの絵の特徴
上の画像を見てください。これは彼の作品と元ネタの比較画像です。全体的にドラマチックになっていて感情が強調されています。
じゃあ具体的にどのように平面的表現が強調されているのでしょうか?元ネタと彼の絵、どこが違うかわかりますか?
まず、気付くのが色の違い!リキテンシュタインは色を赤青黄の三原色に単純化しています。ベタ塗りでグラデーションがありません。
また、線がはっきりとしていることも挙げられます。髪の毛など黒くて太い線でしっかり描かれているのがわかります。
さらに、彼の絵の最大の特徴でもあるのですが、よく見ると印刷物のようなアミ点が描かれています。
これら全ての要素が漫画の平面性を強調しており、一度見たら忘れられないインパクトと表現力を可能にしています。
ということで、まとめると思想や工夫次第で漫画の一コマもアートになるってことですね。いつかあの漫画の名場面を美術館で見ることになるかも!
ちなみに比較画像はここから取ってきました。さらにたくさん比較画像があるので興味のある人はぜひ。