スーラの科学的アプローチと光のさらなる追求




今回はポスト印象派の四天王の一人スーラを詳しく取り上げます。スーラは印象派をさらに進化させ新印象派という新たなステージを切り開きました


新印象派の画家たちは科学性を重視し、印象派の手法をさらに理論化しました。そして、点描法により光をより鮮明に画面に反映させることができると考えました。

印象派の絵はカオスである


まず、比較のために印象派の絵を紹介します。この絵はモネの「ジヴェルニーのモネの庭の小道」(1901-2)。印象派に特徴的な日常的主題、鮮やかな色彩、大気が振動しているような効果が見られます。


しかし、スーラにとってこのような印象派の絵はまるで部屋に乱雑に脱ぎ捨てられた服みたいなものでした。彼はそんな脱ぎ散らかされた服をしっかり畳んで整理すべきだと考えたのです。


われ混沌に秩序と規律をもたらす者…っていう感じです。

科学による光の追求

1880年代、科学は急速にパリの生活を変えていきました。そんなムードの中、スーラも全ては科学により説明される、アートもまた例外ではないと考えました。


そこで彼は色彩科学を勉強し始めました。そして彼は色彩科学と印象派のスタイルを融合させることが現代アートには必要だと感じます。


そもそも色彩科学ってどんなものでしょうか。


たとえば、補色の色を横に並べるとそれぞれの色がお互いを際立たせるという効果があります。補色というのはオレンジ黄色みたいに色相関において正反対の位置にある色の組み合わせをいいます。


それら正反対の色がお互いを引き立てるというのは、いわゆるスイカに塩をかけるとスイカの甘さが際立つ的な理論です。赤色をもっと赤く、緑色をもっと緑に。色の鮮やかさをもっと引き出したいとスーラは考えます。


でも、だからといって赤と緑を混ぜたら汚い色になります。絵の具で色を混ぜていくと黒に近づいていくからです。


そこで、赤や緑の色を混ぜずに原色のままで点として隣接させることで、色の持つ鮮やかさを最大限に引き出す、と同時に遠くから見るとそれらの点は鑑賞者の目で混ぜられて一つの色を形成する点描技法が印象派の画家には採用されました。


点描技法自体は印象派の画家にも使われていましたが、スーラは彼らが感覚的に使っていた点描技法をシステマティックな技法にし、科学的に分析した色だけを計画的に使って絵を構成していきました。


では実際に彼のやり方がどのように絵画に反映されているのか見てみましょう。


光と静寂


スーラの代表作「グランド・ジャット島の日曜日の午後」(1884-1886)です。この絵は実際には縦2メートル、横3メートルという巨大な絵画で、近くから見ると細かい点が見えるはずです。


印象派の絵と違い人や木などの形がはっきりと描かれています。しかし、点描法による色彩の構成により、画面全体に微妙な振動や鮮やかさが生まれています。


しかし、人びとはどうでしょうか。本来賑やかであるはずの光景なのに不気味な静寂が感じられます。まるで時間が止められてしまったかのように。また、人びとも単純化されて描かれています。まるでハリボテみたいです。


実はここが印象派との大きな違いです。実際のパリの公園はもっと賑やかでこのように人びとが秩序的に並んでいることなんてありえません。


あるがままを描こうとした印象派とは違い、このように新印象派の画家は画面を精密に構築していきます


印象派は科学的アプローチにより新印象派へと進み、もはや絵画は単なる自然の模倣ではなくなっていきます…















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