アートのブレイクポイント
自然を模倣することは芸術の大前提。古代に描かれた壁画から印象派の絵画まで、自然をどれだけリアルに描くかを芸術家たちは追求してきました。しかし、リアルに描こうとする中で芸術表現はさまざまなルールでがんじがらめになってしまいます。たとえば、遠近法を構図に取り入れることや自然に忠実に色を塗ることなど。。。
そして迎えた19世紀末。旧態依然とした芸術に対してうんざりした若いアーティストたちはついに自然を模倣することをやめました。
自然を模倣する必要がないということは、今までのルールに従う必要が無くなります。その結果様々な表現スタイルが生まれていくことになります。
今までのルールをいかに壊し何を表現するのか。それが20世紀の美術の課題でした。
ブレイクスルーの数々
まず、フォーヴィスムにより色彩のルールが壊されます。フォーヴィスムでは実際の色を完璧に無視して画家の主観的な選択で色を塗ります。色彩の次に形態の改革が起こります。キュビスムの画家たちは風景や人物をシンプルな形に分解し、同一画面上に様々な視点を取り入れます。これにより1つの視点から見た現実を描くという絵画の約束事は壊されました。
また絵画では写真のように止められた静的な空間が描かれてきましたが、未来派は時間の概念を絵画上に持ち込み画面にダイナミズムをもたらしました。
そして20世紀の美術はついに現実世界と隔離された抽象の世界に行き着きます。対象を再現することを放棄していった結果、線や色のバランスを追求することであったり、素材の味を引き出すことといった内面的な方向に芸術は突き進んでいきます。
さらなるブレイクスルーはデュシャンの「泉」(1917)によってもたらされます。芸術家が選択することで単なる既製品も芸術たり得るという考えは、作品を創作するという芸術の前提の前提を打ち壊すものでした。作者は何も作らなくてよいわけです。
このようにアートはアート自体の定義を塗り替えながら20世紀に展開されていきます。つまり、100年前と現在のアートの定義は全く異なるということです。この後アートは歴史の中でどのような方向に進んで我々の時代のアートに行き着くのでしょうか。。。
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