ゴッホのうねりと表現主義の画家たち




ゴッホは形態のねじれやうねり、幻想的な色使いにより感情を表現しました。今回はそんな彼の表現主義的テクニックに着目し、彼以前と以後の表現主義の画家たちを紹介していきます。

ゴッホ以前の表現主義


実はゴッホが生まれる300年前に、すでにねじれやうねりにより感情を表現したアーティストがいました。それはルネサンスの巨匠エル・グレコです。


たとえば、「無原罪のお宿り」(1607-1613)ではねじられた身体、独特の歪みによりゆらめいているような画面、激しいタッチが特徴的です。


しかし、当時はこの観るものの感情に訴えかけるような表現主義的手法は受け入れられませんでした。時代がエル・グレコに追いつくのには300年かかることになります。


ゴッホとエル・グレコの間には絵の表現手法以外にも共通点がたくさんあります。どちらも宗教に熱心で物質主義を嫌ったこと。アーティストとしてのキャリアは順風満帆ではなかったこと。インスピレーションを求めどちらも生まれ故郷を離れたこと。


しかし、大きな違いがあります。それは主題の違いです。エル・グレコの主題は主にミステリアスで、貴族的で、宗教的なものでした。一方ゴッホはカフェや木、農民など日常風景を好んで描きました。これは印象派以前と以後の大きな違いでもあります。

ゴッホ以後の表現主義の画家たち

 ゴッホは1890年に誰にも知られずに亡くなりますが、表現主義は彼を信望するアーティストたちによって受け継がれていきます。



ゴッホの影響が顕著に見られる例として、有名なムンクの「叫び」(1893)があげられます。この絵は1893年に描かれました。絵画上における感情の表現法に悩んでいた彼はゴッホの絵からインスピレーションを受け、ゆがみやうねりにより不安感を強調することに成功しています。


後々、人の叫びというモチーフは20世紀の代表的アーティストフランシス・ベーコンの中心的興味関心になっていきます。


彼の「映画『戦艦ポチョムキン』の乳母のための習作」(1957)では叫んでいる人が中央に配置されています。変形された人の造形と現実にはありえない色が叫びを痛々しいまでに増幅しています。彼自身ゴッホのことを「偉大なヒーロー」と称えており、ゴッホの影響を受けていることが伺えます。


このように、形や色を感情で支配するような荒々しいゴッホの表現スタイルはアートの新しい方向性を切り開き現代アートに大きなインパクトを残していったのです。









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