これは世界で最も有名な男子用小便器です。タイトルは「泉」。1917年にフランス出身のアーティスト、マルセル・デュシャンにより作成されました。彼はどこにでもあるただの男子用小便器にリチャードマット(R.Mutt)という署名をし展覧会に出品しました。
この作品を見た美術家たちはこの作品をアートとみなすかどうかという問題に悩まされました。なぜなら、それは署名されたただの便器だからです。皆さんはこれがアートだと思いますか?
アートの定義を壊してしまった「泉」
考えれば考えるほどわからなくなってくると思います。なにを持ってアートを定義するのか?という問題提起こそデュシャンの意図したことでした。
結果としてアートの定義がデュシャンの「泉」以降、絵画や彫刻だけに限らずどんどんと広がっていき、収集がつかなくなってしまいました。デュシャンはこの作品を展示することでそれまでの美術の固定概念を壊したのです。
以下、デュシャンの言葉を抜粋します。
"周知のとおり、芸術とは、語源的に言えば、作る、手で作る、ってことなんだからね。それなのに私は、作るかわりに既製品(レディ・メイド)を持って来た。ということは、《手を加えたレディ・メイド》は、芸術を定義することの可能性を否定する形式ということになります。”―「G・H・ハミルトンとの対話」、1959年
デュシャンは今日のアートをさらにややこしく、おもしろいものにした張本人なのです。