20世紀を代表するハリウッドスター、マリリン・モンローのイメージがひたすら繰り返されるアンディー・ウォーホールの「マリリン」(1967)はポップアートの代名詞的作品です。
そしてポップアートは現代アートの代表的芸術運動。そんなポップアートに今回は着目します。
ポップアートとは
ポップアートはだいたい1956年から1970年の間アメリカで流行ったアートスタイルで、主題として大衆社会や消費社会を扱っているのが特徴です。その根本的な思想はアンディー・ウォーホールの以下の言葉に集約されています。
「ポップアートはあらゆるひとに開かれている。アートが選ばれた少数者のためだけにあるべきだとは思わない」
この言葉の背景にはあらゆるひとに開かれていなかった抽象表現主義の存在がありました。
ポップアート以前のアメリカではポロックやロスコの抽象表現主義が隆盛を極めていました。彼らは内面的な感情を抽象的にキャンバスに描きます。
しかし、抽象表現主義の構図の中心がないオールオーバーな画面構成や抽象的な表現はアートを難解なものにして、一般大衆とアートの世界の間に壁を作ってしまう一面もありました。
そんな抽象表現主義に対してあまりに内向的すぎると批判したのがポップアートでした。
ポップアートからすると芸術は個人的な感情などを表すものではなくて、もっと表面的でみんなが共有するイメージを提供するものでした。
そのため、ポップアートの芸術家たちはポスターや写真、漫画など一般の人に馴染みのあるメディアからイメージを切り出し大衆文化の象徴としてアートの形で表現します。
ポップアートは俗っぽいポピュラーカルチャーと高尚なアートという相容れないものを両立させ、美術と生活のボーダーラインを取り払ったのです。
アンディー・ウォーホールとファクトリー
ポップアートのスーパースターといえばアンディー・ウォーホールです。彼は元々商業画家でイラストレーションを作成していたのですが、32歳のときにファインアートの世界に移り、身近にあったキャンベル・スープの缶やドル紙幣をモチーフにした作品を制作していきます。
彼はアート作品を工場で大量生産するかのように制作していくことから自分のスタジオを「ザ・ファクトリー」と呼び、アート・ワーカーと呼ばれるスタッフを雇って機械的に作品を量産していきます。
そんな彼の狙いはアーティストとアートを切り離すことでした。あえて彼自身の手を加えないでアートを制作することでアートからアーティストの影を消し去ったのです。
一方、抽象表現主義では画家の内面的な感情が絵画で表現されており、アートとその作成者であるアーティストは切っても切り離せない関係でした。
しかし、それはアーティストの内面にアートの真の意味が隠されているということであり、アートを理解できない大衆と理解できるアーティストとその仲間たちといったふうに境界線を両者の間に引いてしまうものでもありました。
その点でファクトリーによる大量生産はその二つの境界線を曖昧にしてしまう画期的な取り組みだったのです。
「アンディ・ウォーホルのすべてについて知りたければ、表面だけを見ればいい。」
アンディ・ウォーホルのこの言葉の通り、彼の作品こそがアンディ・ウォーホルの全てあって、そこに隠された意味なんてありません。アートからアーティストの感情や思想は全て取っ払われているからです。
そうやって出来上がったアートはアーティストの所有物ではなく、みんなのものとなります。まるで大量生産されたコカ・コーラが多くの人に愛されるように。
「全ての人に開かれたアートを」というポップアートの考えを彼は大衆イメージの大量生産という方法でクールに体現したのです。
そんなウォーホルの作品は通販なんかで安く手に入るので部屋のアクセントとして飾ってみてはどうでしょうか。美術館にいかなくてもアートを気軽に楽しめます。それがポップアートです。
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