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絵画の中の恒久平和とモンドリアンの新造形主義



人生にはいろいろな対立があります。ネガティブとポジティブ、意識と無意識、精神と肉体、男性と女性、善と悪、光と闇。。。


対立はいつだって個の強調から生まれます。何かを個別のものとして定義することで、それとそれ以外に世界は分かれてしまいます。そのような分裂から異なるものが生まれていくのは避けられません。


国家もそのような分裂の結果形成されます。そして、国家同士の対立は戦争を生みました。1914年から1918年にかけて起こった第一次世界大戦では国家間の大きな対立構造の中で多くの人が亡くなることになります。


戦後の消耗しきった世界に対して、オランダの画家モンドリアン個の対立ではなく個の調和を強調する絵画を制作し、これからの社会が進むべき道を指し示そうとします。

どのようにして調和を生み出すか

モンドリアンは全てのものに共通する根源的なシステムを反映し、それゆえに個の対立を調和させる絵画を目指しました。


もう少しわかりやすく例えます。植物たちが住む世界がありました。そこでは花の国、野菜の国、果物の国が存在しており植物たちは植物界の覇権を巡って争っていました。


そんな状況の中、「俺達には全員根があって葉っぱがある。それに光合成だってできる。俺達は同じ植物じゃないか」と宣言する植物が表れます。


それがモンドリアンです。ただし、彼は絵画の世界でそのコンセプトを表現しようとしました。


絵画の世界で全てに共通するもの。それは色、形、線、空間などの基礎的な絵画的要素です。それらの組み合わせで絵画世界は作られているからです。


モンドリアンはそれらをもっと純粋な要素にまで突き詰めます。結果、垂直線と水平線、赤青黄の三原色といった要素が彼の絵では採用されます。彼の絵では、斜めの線や緑は一切使われません。


また、色が混ぜ合わされることもありません。純粋に赤は赤、青は青として絵画上で表現されます。なぜかと言うと、調和を作り出すためにはそれぞれの要素が独立した個である必要があるからです。


そのような限られた要素だけで描かれる彼の絵は完全なる抽象です。現実世界の何もモデルにしていません。線や色などの調和が彼の絵の主題です。そんな彼の絵画は新造形主義と呼ばれました。


上の「赤、青、黄のコンポジション」(1930)は彼の探求の結晶です。


ここで注目してもらいたいのが黒い線の太さです。微妙に違うのに気づきましたか?


人間の目は細いラインを素早く読み取ることができるが太いラインは遅くなる、とモンドリアンは考えました。この手法により絵画に動きを加え人生の連続性を表現しています


また、縦と横のラインは人生における二項対立を示しています。異なる要素である縦と横のラインが交わるところで新たな関係性が生まれ正方形や長方形などの面が形成されていきます。


モンドリアンは人生の本質をこのシンプルなイメージに詰め込もうとしたのです。




後に線や色などの要素間の調和を第一とする新造形主義の考えはデ・スティルという運動に引き継がれ、現代建築やデザインに展開されていきます。



これはデ・スティルのメンバー、ヘリット・リートフェルトによる「赤と青のいす」(1917)です。まるでモンドリアンの絵画が現実世界へ抜け出してきたかのような造形ですね。


ただモンドリアン自身はデ・スティルのリーダー、ドースブルフと対立してしまい1925年に脱退してしまいます。どうしても対角線は許せなかったんだとか。


完全なる調和は芸術の世界でしか実現されなかったのでしょうか。。。












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